TUBCに限らず、2025-26シーズンから、多くのバスケチームで応援のスタイルが変わったと思うブースターの方は多いと思います。
例えば、昨シーズンに加入してくれたマーカスの影響から交流が深まった千葉ジェッツふなばしでも、「ホームゲーム演出における音源について一部変更のお知らせ」をホームページに掲載し、2025-26シーズンからホームゲームの演出が変わることを説明しています。
2025-26シーズンから顕著に変化したことは、洋楽の使用を制限するようになったということです。
Bリーグの公式ウェブサイトには、ライブ配信における洋楽使用制限について直接記載された統一の運用規定は見つからないため、この件に関する規定の具体的な内容は、Bリーグがクラブに配布した内部規定や通達で定められている可能性が高いと考えられます。
この件に関して、今回の記事では、この“利用制限”の背景にある著作権・原盤権の問題について、少々お話ししたいと思います。なお、わかりやすさを優先し、専門用語はできるだけ噛み砕いて説明しておりますので、その点ご了承ください。
そもそも「音楽を流す」には2つの権利が関係する
会場で楽曲を流すときには、大きく以下の2つの権利が関係します。
| 権利 | 内容 |
|---|---|
| 著作権 | 作詞・作曲した人が持つ権利 |
| 原盤権 | 音源(CDなど)を制作した会社が持つ権利 |
著作権とは?
曲そのもの(メロディ、歌詞などの「音楽の中身」)を作った人が持つ権利です。
📌 例:
曲を作った A さんが「その曲をネットで流していいよ」と決める権利
よく聞く 「JASRAC」 や 「NexTone」 はこの著作権を管理する団体です。
原盤権とは?
録音された音源(「録音物」)そのものの権利です。作った曲をだれかが歌って録音し、CD や配信音源として出すと、その「録音物」には別の権利が発生します。
📌 例:
音源を作ったレコード会社が「この録音を配信で使っていい」と決める権利
つまり同じ曲でも、著作権と原盤権が別々に存在することになります。そのため、配信や動画で曲を流すには、この両方をクリアする必要があります。
国内曲はスムーズ、海外曲は手続きが複雑…
▼ 国内の楽曲の場合
では、まず、国内曲を利用する場合を説明します。TUBCの応援に使われる曲としては、例えば、EXILE THE SECONDの「YEAH!!YEAH!!YEAH!!」などが挙げられます。
著作権は、JASRAC / NexToneなど、日本の団体が一括管理していることが多いため、こちらの団体を経由することで、手続きは割合シンプルに進めることができます。
また、原盤権も国内レーベルが多いため、国内のレコード会社や制作会社に手続きをすることで、やり取りが比較的スムーズに行えます。
▼ 海外の楽曲の場合
問題はここ。海外の楽曲としては、例えば、昨シーズンまでよく使用されていた「Kernkraft 400」(Zombie Nation)などが挙げられます。
海外の楽曲は、著作権・原盤権ともに海外の権利者・組織が管理していることが多く、以下の課題が生じます。
✅ 手続きが煩雑
✅ 許可を取るまで時間がかかる
✅ 許諾が降りないケースもある
✅ 利用料が高額になる可能性
✅ 利用条件が複雑
💡
Bリーグは「会場で流すだけ」ではなく、試合を ネット配信・アーカイブ公開するケースが多いため権利処理がさらに複雑になります。
特に配信では「公衆送信権」が発生
会場で音楽を流す権利(演奏権)とは別に、試合をネット配信する場合は公衆送信権(配信の権利)をクリアしなければなりません。
これが海外曲をめぐる最大のハードルになります。
✅ 会場で流す許可 ≠ 配信してOK
→ まったく別の手続きが必要
海外曲 × 配信 → 壁が大きすぎる
Bリーグでは、試合を バスケットLIVE / 各種配信サービスで全国に配信しています。また、B.LEAGUEのホームページでは、「日本国外の放送局6つの国と地域における8局と契約を締結し、最大27の国と地域でりそなグループB.LEAGUE 2024-25におけるB1一部試合の海外放送・配信を開始したことをお知らせいたします。」との報道があります。さらに、DAZNはBリーグ2025-26シーズン、B1・B2の全試合をライブ配信する予定となっています。
そのため「配信でも海外曲が流れる」ことになりますが、海外曲を配信で利用するには
- 著作権:海外の管理団体との契約
- 原盤権:レコード会社に個別交渉
など、かなり大変な作業が必要となります。
✅ 管理団体によってルールが違う
✅ 市販音源でも使えるとは限らない
✅ 許諾が得られないケースもある
✅ 配信先が海外だとさらに複雑
これらを毎試合・毎曲対応するのは現実的ではありません。
利用できない → ミュート・差替えが必要
もし海外曲がかかった状態で配信が行われた場合、
- 音声が自動でミュートされる
- アーカイブで音が消える
- 動画自体がブロック
などの状況が起きることが考えられます。
Bリーグは生配信・アーカイブともに視聴体験を大切にしたいはず。そのため、「配信で音源が聴こえないなら、最初から会場で流さない方がいい」という判断になったと考えられます。
海外曲を制限した背景 まとめ
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 権利処理が複雑 | 管理団体・レーベルが海外 |
| 交渉に手間がかかる | 1曲ごとの確認が必要 |
| 配信で追加手続きが必要 | 会場利用と別枠 |
| 許諾が得られない可能性 | 拒否・制限あり |
| 費用が増える | 利用料が高くなることも |
| 視聴体験の確保 | ミュート回避のため |
→ 要は「コスト・手間・リスクが大きすぎる」ということ。
「海外曲NG」は視聴者にとってもメリット
今までなじみのある楽曲が使えなくなるため、一見不便に感じますが、これをメリットととらえることもできます。
✅ 配信中に音が消えるおそれがなくなる
✅ アーカイブが権利で削除されにくくなる
✅ 配信が安定し、安心して楽しめる
このように視聴者の体験向上という意味では、合理的な判断とも言えます。
今後はどうなる?
今後、リーグとして海外楽曲の権利処理が進められ、利用可能になる可能性はあります。
ただし、コストや交渉の難しさを考えると、当面は「国内楽曲中心」が続く可能性が高いと考えられます。その取り組みとしてTUBCでは、オリジナル曲を制作したり、権利処理が比較的簡単な楽曲を採用する、といった取り組みが進んでいると考えられます。
タイムアウト時にUNITE DANCESを起用することになったのも、この対応の一環と考えられます。
まとめ
Bリーグが海外曲を制限した理由は、著作権・原盤権の権利処理が配信時に非常に難しいから。
特に海外楽曲 × 配信では、
- 手続きが複雑
- 許諾を得られない場合がある
- 費用が高い
- 視聴体験に悪影響が出る
といった問題が起こるため、利用が制限されるに至っていると考えられます。
決して「海外曲が嫌いだから」ではなく、配信を安全・安定して見てもらうための選択と言えます。
Bリーグを楽しむファンのみなさんの間でも「音楽が変わった理由」として知っておくと、より深く納得できると思います。
変化を新たな楽しみと捉え、今シーズンも試合観戦を楽しんでいきましょう!



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